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Rain

6月になった。

相変わらず雨は降らない。

元気を出そうにも上がったり下がったりの毎日で、

自分をもてあましている。

雨は嫌いなはずなのに、ないとないで恋しくなって、

眠る前に動画サイトで雨の音を探しては、

耳にねじ込んで眠りに落ちるのを待つんだ。

「五月雨ラブレター」を作るときは、いつも

秦基博さんのRainをエンドレスで流している。

何時間も。ずっと同じ曲を聴いている。

ここ最近、ことばがじわじわと

こころにたまっていくのを感じていた。

でも、ことばに傷つく出来事が多すぎて、

話したら自分も誰かを傷つけてしまいそうで怖くて、

じっと耐えていた。

Rainのはじまりの歌詞が、響く。

「言葉にできず 凍えたままで

 人前ではやさしく生きていた

 しわよせで こんなふうに雑に

 雨の夜にきみを抱きしめてた」

作られた窓から見る、いろいろないろもの。

作られた窓から見せる、作られたわたし。

本当のことなんて、真実なんて、

神様しかわからない。

命や、命と同等の価値をもつものを脅かされそうになったとき、

わたしはきっと戦うと思う。

でも、浅はかになんでもを暴こうとする独善的な正義は、

果たして誰を幸せにするのだろう。

わたしには、わからない。

それぞれの正義と、それぞれの真実。

言葉にできなくて凍えているのも、

誰かにやさしくしたいと思うのも、

透明で、雑な空気も、

生きていれば、全部

本当で、

嘘偽りは、ないのにね。

もしかしたら、雨だったら、

どの本当も、

洗い流してくれるのかもしれない。

五月雨ラブレターのキャッチフレーズ、

「誰にも言えない秘密があるの。」

は、そんな雨の包容力を信じて、つけた。

多くの人の罪や、罰さえも、雨が許してくれるように

ささやかな祈りをこめて。

雨があがったら、虹が出るはず。

もう夜が明けた。

東の国は、今日を待ってはくれない。

ふと本当の窓を見たら、雫。

おかえり、Rain。

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